本記事では、高山病について、そして対策・予防などについて医師が解説します。
20代医師、救急・麻酔など全身管理を専攻している。複数サイト運営歴6年以上のライターであり、健康、旅行、節約に関する知識を活かし、読者に役立つ情報を提供しています。
高山病とは?
高山病は、標高の高い場所に急激に移動した際に発生する身体の不調を指します。
これは、高地における酸素濃度の低下により、体が十分な酸素を得られなくなることが原因です。
高山病の症状には、頭痛、吐き気、めまい、疲労感、息切れなどが含まれます。高度が上がるにつれて、症状が重篤化し、急性高山病(HAPE: 高所肺水腫、HACE: 高所脳浮腫)に至る場合もあります。
高所順応していない人が、急速に高所に移動した場合には起こるのが高山病であり、2500m登高した際には20%が発症すると言われています。
高山病の原因とメカニズム
高山病は、低酸素環境に適応できない身体が引き起こす反応です。
標高が高くなると、気圧が下がり、空気中の酸素分圧が低下します。これにより、血液中の酸素飽和度(SpO2)が低下し、脳や他の臓器に供給される酸素が不足します。
酸素不足に対する身体の反応として、脳血管が拡張し、脳内圧が上昇するため、頭痛や吐き気といった症状が現れます。また、肺血管が収縮し、肺高血圧を引き起こすことがあり、肺水腫につながることもあります。
肺水腫とは肺に水が溜まってしまう病態のことです。肺水腫を引き起こした場合、呼吸困難に陥り死に至る可能性もあります。ICUなどへの入院が必要となる場合もあります。
高所障害の死因の大部分を占めます。
高山病の主な急性症状
急性高山病 (acutemountain sickness) とは、高所障害の軽症型のことを指し、頭痛に加えて、消化器症状(食欲不振、吐気または嘔吐)、疲労または脱力、めまいまたはふらつき、睡眠障害のいずれかを有する場合に診断する。
というものになります。
- 頭痛: 低酸素による脳血管の拡張が原因。
- 吐き気・嘔吐: 脳内圧の上昇により、吐き気が誘発される。
- めまい: 脳への酸素供給が不足することで生じる。
- 疲労感・倦怠感: 組織への酸素供給が不足し、エネルギー代謝が低下。
- 息切れ: 呼吸が浅く速くなり、十分な酸素を取り入れることが難しくなる。
- 睡眠障害: 何度も目が覚めて熟眠できなくなる。
高山病の予防・対策グッズなど
1. 高度順応を心がける
高地に移動する際は、急激な高度上昇を避け、少しずつ高度を上げていくことが重要です。ある程度登ったら適度に休息、またある程度登ったら休息、を繰り返すことで体が新しい環境に順応しやすくなります。
2. 事前の健康管理
出発前に十分な休息と栄養を取り、体調を整えておくことが大切です。
特に、風邪や体調不良を避け、免疫力を高めておくことが推奨されます。また、アルコールや睡眠薬の使用は、体の適応力を低下させる可能性があるため、避けた方が良いでしょう。
3. 予防・対策グッズ
対応の基本は下山です。軽症の場合には登高を休止し、500m〜1000m程度下山することで症状の改善が期待できます。
そのほかに個人でできることとしては以下の予防・対策グッズを用いることです。
- 酸素吸入:携帯酸素を利用することで、酸素飽和度を一時的に改善し、症状を緩和できます。
- 頭痛薬の内服:アセトアミノフェンやその他の頭痛薬も有効です。
他にもアセタゾラミドやデキサメタゾンなどの薬剤が予防の効果がありますが、医師の処方が必要となります。
アセトアミノフェンはインフルエンザやコロナの発熱、頭痛などにも使える汎用性が高いものです。
ただし、肝臓が極端に悪い方は肝臓に負担がかかる場合もあるので注意が必要です。
携行缶の酸素は、本気で必要な量を吸おうとすると1分〜数分で無くなる量です。
あくまで下山までの応急処置としての役割しか果たせません。
※多量の酸素が必要な人は10L/分の量で吸うこともしばしば。携行缶程度の量だと数十秒で無くなります。
4. 水分補給と栄養管理
高地では体内の水分が失われやすいため、定期的に水を摂取することが重要です。また、バランスの取れた食事を心がけ、体力を維持することも大切です。
5. パルスオキシメーターの活用
パルスオキシメーターを使用して、血中酸素飽和度(SpO2)を定期的に測定することで、酸素不足を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。SpO2が90%を下回ると、酸素不足が進行している可能性があり、注意が必要です。
Amazonでの売上1位のパルスオキシメーターです。登山の際には各パーティに1台はあった方が良いです。
正常値は97%〜ですので、それより下がっている場合には体が酸素不足に陥っている可能性があります。
パルスオキシメーターは登山以外でも、肺炎・喘息・COPDなどの病気が重症化しているかの判断にも使えるので、登山以外としても役に立つアイテムです。
まとめ
高山病は、適切な予防と対応でリスクを軽減できる病態です。
徐々に高度に順応し、体調管理を徹底することで、安全に高地での活動を楽しむことが可能です。
また、鎮痛薬や酸素缶、パルスオキシメーターなどの予防対策グッズを活用して、身体の状態を常に把握し対策することが大切です。
高地に挑む際には、これらの対策をしっかりと講じて、安全で快適な登山やトレッキングを楽しんでください。
コメント