本記事では、若手医師に人気な脱毛の問診バイトについて、私の友人の関東在住の美容外科の女性医師に取材し、執筆しています。
20代医師、救急・麻酔など全身管理を専攻している。複数サイト運営歴6年以上のライターであり、健康、旅行、節約に関する知識を活かし、読者に役立つ情報を提供しています。
脱毛前のカウンセリング
カウンセリングの重要性
- 背景と現状:1996年にレーザー脱毛の理論が発表され、医療レーザー脱毛は普及し、安全に効果が得られる機会が増えた。しかし、どれだけ注意を払ってもトラブルが完全にゼロになることはない。
- 医療者の役割:患者が気にする合併症も多くのトラブルにつながる可能性があるため、最初のカウンセリングでしっかりと説明することが重要。
- カウンセリングのポイント:
- 初回のカウンセリングの重要性: 患者が安心して治療を受けるために、詳細な情報提供が不可欠。
- インフォームド・コンセント: 患者が同意した内容を理解し、記憶してもらうことが必要。
- 効果的なカウンセリングの実施:説明を省略せず、患者の理解を確認することが重要。患者の誤解や不安を防ぐために、インフォームド・コンセントをしっかりと行う。
基本的には未経験の医師でも、問題なくできるようなスライドが用意されているそうです。
初回のカウンセリングは、レーザー脱毛の効果と安全性を正確に伝えるために極めて重要な部分であります。
レーザー脱毛の問診に関するポイントまとめ
1. レーザー脱毛の原理と期間
レーザー脱毛の原理を簡単に説明し、治療には比較的長い期間が必要であることを伝えます。
具体的には、レーザーが毛のメラニンに反応し、成長期の毛根に影響を与えることを説明します。
2. 必要回数と処置の間隔
脱毛には平均7~9回の処置が必要で、各処置の間隔は1カ月半~2カ月以上空けることが推奨されます。
これにより、患者の不安を軽減し、トラブルを防ぎます。
最低1ヶ月間隔を開ければ問題がありませんが、少し長めに伝えることで患者さんの負担軽減、予約の取りやすさに繋がります。
3. レーザー脱毛の限界とその効果
レーザー脱毛がすべての毛を100%無くすことは難しいことを患者に説明し、一定程度の毛の減少が見込めることを伝えます。また、エステ脱毛との差についても触れることが重要です。
4. レーザー脱毛の効果の出にくい部位
太い毛の方が効果が出やすく、産毛や細い毛は効果が出にくいことを説明します。部位によって効果の出方が異なることも患者に伝える必要があります。
これらのポイントをカウンセリングでしっかりと説明することで、患者の理解を深め、満足度を高めることができます。
効果について質問された場合には、「効果に関しては、個人差があります。」と答えるのが無難です。
5. レーザー脱毛後の合併症
レーザー脱毛自体は進化しており、施術者の技術も向上しているため、合併症が発生する確率は非常に低いですが、ゼロではありません。以下のような合併症が発生する可能性があります。
- 色素沈着
- 水疱
- 痂皮
- 浮腫
- 発赤
これらの合併症は、早期に適切な治療を行うことで最小限に抑えられます。
患者には合併症のリスクについて正確に伝え、症状が出た場合は速やかにクリニックに相談するよう促すことが重要です。
大手のチェーンの脱毛クリニックは必ずマニュアルが用意されています。
基本的な合併症なども記載されているので、その通りに読めば大丈夫です。
必ず問診すべき項目(禁忌事項)
内服薬剤についての概要
内服薬に関しての問診はしっかり行いましょう。
基本的には若い男女が主体なので、飲んでいてもビタミン剤、鎮痛薬などであることが大部分です。
1. 薬剤性光線過敏症
- 概要:内服薬で光線過敏症が発生する可能性のある薬剤は非常に少ない。
- 原因:光線過敏症を起こす光線の多くは紫外線であり、ほとんどの医薬用レーザー脱毛機器は紫外線の光を含まない。
- 詳細:紫外線以外の可視光線による薬剤光線過敏症はほとんどないが、レーザー脱毛治療中に偶然その薬剤による光線過敏症としての皮膚症状が現れることもある。
基本的には服薬している薬に関しては、添付文書を必ず調べるようにしましょう。
抗精神病薬、抗アレルギー薬、抗菌薬、高圧薬など割と常用されやすい薬剤の中にも「光線過敏症」の副作用報告のある薬も多いです。
上記のようにレーザー脱毛で使用する光線は光線過敏症を引き起こすのとは異なりますが、念には念を入れてリスクに関して説明し、ご理解頂いた上での照射としましょう。
万が一何かがあった場合での保身となります。
光線過敏症の副作用のある薬剤を飲んでいても問題はないことは多いですが、基本的にクリニック毎にマニュアル化されていることが多いので、対応に関してはバイト先の方針に従いましょう。
2. 金製剤
- 概要:レーザー治療を行う際に考慮しなければならないのは金製剤。
- 影響:金製剤使用中の患者では、褐色を帯びた色素沈着が合併して生じることがあり、難治性で遅延する傾向がある。
- 代表的な金製剤:オーラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム(シオゾール)。
実際には、飲んでいる方は極めて稀だとは思いますが、一応頭の隅には置いておきましょう。
3. 抗凝固剤
- 概要:ワーファリン等の抗凝固薬や、バイアスピリン等の抗血小板薬、血流改善剤を内服中の患者は、レーザーの物理的衝撃で皮下出血や下血腫が生じやすい。
- 対策:試験照射後にレーザー脱毛を継続することは可能だが、医師の監督のもと慎重な対応が必要。
クリニックでは試験照射を行うことができるので行ってからにするのが無難です。
リスクに関しても必ず説明しましょう。
クリニックによっては抗凝固薬を飲んでいると施術できないところも多いです。断るのもリスク回避のために悪くない手段でしょう。
4. レチノイド
- 概要: レチノイド(ビタミンA誘導体を含むビタミンA類似物質)の内服中は、皮膚の脆弱化や剥脱性の影響がある。
- 具体例: トレチノイン、エトレチナート、アダパレン。
レチノイドとは、一般の医師には馴染みのないものだと思います。美容医療の世界では、若い女性に人気となっているものです。
ビタミンA(レチノール)とその類似体、さらにそれらと同様の作用を持つ化合物を総称する名称のことを指します
レチノイドの代表的な効果は、まず、角化細胞の増殖とターンオーバーを促進することで、表皮や角層が若返り、メラニンの排出が助けられるため、シミが薄くなります。また、角質層を薄くすることで、透明感のある肌に導きます。
ただ肌が一時的に敏感になってしまうので2週間以上の休薬後にレーザーを当てる必要があります。
妊娠の可能性、授乳の有無の確認
- 妊娠中のレーザー脱毛の影響:
- 胎児への直接的な影響はほとんどないと考えられる。
- ただし、レーザー脱毛によって合併症が生じた場合、妊娠中の治療には制限が多く、治療が困難になる可能性がある。
- 治療の中断や延期:
- 妊娠が判明した場合、レーザー脱毛は中止または延期するのが一般的。
- 授乳中の注意点:
- 産後の授乳中は、シミが濃くなることがある。
- 禁忌ではないが、積極的な脱毛は推奨されない。
レーザー脱毛を行う前には、妊娠の可能性と授乳の有無を確認することが重要です。
書いてはみましたが、実際にはカウンセラーの事前問診があるので、そこでスクリーニングはされているので、実際に妊娠のある方は問診にはこないのが現状です。
妊娠について質問された場合には、上記のことを答えましょう。
その他、禁忌事項となる可能性がある事項確認
ケロイド・肥厚性瘢痕の既往のある方
ケロイドや肥厚性瘢痕がある場合、レーザー脱毛によりさらに瘢痕が悪化する可能性があります。
基本的には主治医許可を得た場合にのみの照射となります。
- 仮に熱傷が生じてしまった場合に、瘢痕化してしまうリスクが人より高くなってしまいます。
治療部位に感染症や創傷のある方
感染悪化の原因となりうるので禁忌です。
皮膚癌の病歴のある方
皮膚癌の病歴がある場合、レーザー照射により新たな癌が発生するリスクがあるので注意。
日焼けをしている方
日焼けしている肌は表皮細胞のメラニン量が増えているため、表皮の炎症や火傷のリスクがあります。
日焼けにより皮膚が炎症を起こしている場合、レーザーの影響で色素沈着やさらに炎症が悪化する可能性があります。
基本的に契約時には日焼けをしないようにお伝えするのですが、それでも日焼けをしてきてしまった場合には照射ができません。
- 稀に、日焼けサロンに通っている方がいます。その場合には脱毛期間はストップしていただいた上で、2、3ヶ月期間を空けてから初回照射としています。
光線過敏症の方
光線過敏症は低い出力の紫外線や可視光線に対する過敏症であり、レーザーも影響を与える可能性があります。
基本的には光線過敏症の既往のある方は照射することができません。長期間症状なく、主治医の許可もある場合にのみの照射となります。
また施術を行う際にはテスト照射を必ず行いましょう。
- 現実的にはレーザー脱毛では過敏症を引き起こす可能性は低いと言われていますが、クレームとなり得るので注意しましょう。
多毛症を来たす内分泌・代謝疾患
卵巣性または副腎性アンドロゲンのいずれかが増加した場合に、男性化徴候(非女性化現象)や一部の症状として多毛症が生じる場合があります。
こういった疾患がある場合には、そもそも減毛効果が薄い場合や、硬毛化を来した際に難治性となることが多いので十分な検討が必要です。仮に行う場合には、主治医の許可などを得てからにしましょう。
- 副腎性疾患
- 先天性副腎皮質過形成(congenital adrenal hyperplasia : CAH)
- クッシング症候群
- クッシング病(下垂体腺腫)
- 異所性ACTH産生腫瘍
- 副腎腺腫
- 先天ステロイド産生副腎腺腫
- 卵巣性疾患
- 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)
- アンドロゲン産生卵巣腫瘍
- その他
- 末端巨大症、高プロラクチン血症、晩発性皮膚ポルフィリン症
上記は複数ある多毛の原因の一部です。
レーザー脱毛を行えるかどうか判断する必要がある疾患
糖尿病
血糖値が高いと感染のリスクが上昇することを言われています。
レーザー脱毛をするだけであれば問題ないことが多いですが、仮に火傷などが起こって感染症を起こしてしまった場合に感染が遷延してしまう恐れがあります。
リスクを考え断るのも間違いではありませんが、病態は安定しているためにどうしても施術を行いたい、と言う場合にはこれらのリスクを承知していただいた上で(カルテにもしっかりと記録を残し)施術を行います。
バセドウ病
若い女性が多い美容クリニックでは、かなり既往歴としては多い疾患の1つです。
基本的に首を避けて照射すれば問題ありませんが、念の為、主治医許可を得てもらうことも1つの手です。
バセドウ病に関しては、医師によってそのまま照射する場合と、主治医許可取ってもらう場合と、問診医師によって、判断が分かれます。
手術などを行う際には、必ず甲状腺ホルモンの値を確認して、痛み刺激による甲状腺クリーゼの予防、対策を講じてます。
脱毛の痛みはそこまでではないものの、年には念を入れるのも1つの手です。
皮膚疾患・全身疾患
若い男女がメインなので、あってもcommon diseaseなのですが、仮に照射の可否が分からない場合があります。
上記の禁忌事項にも当てはまらないけれども、なんとなく不安な場合には「主治医の許可をとってから契約にします。」と伝えるのが無難です。
患者さんの手間は掛かってしまいますが、安全優先・リスク回避で考えると、無難です。
照射による合併症と対応
一次的な合併症
- 浮腫・発赤:
- 生体組織に変化を与える処置を行うため、浮腫や発赤が生じることがあります。これらは通常、数日から数週間で自然に消えることが多いです。しかし、症状が長引く場合は、慎重に対応する必要があります。
- 毛嚢炎:
- レーザー脱毛後に毛嚢炎が発生することがあります。これは、毛嚢に一致して炎症性皮疹が出る状態です。予防策としては、冷却や消毒を徹底し、症状が出た場合には早期に適切な治療を行うことが重要です。
- 火傷:ごく稀に1度や2度浅層の熱傷を起こしてしまう方がいます。熱傷はかなり有名な合併症の1つなので院に常備されているステロイド軟膏などを処方しましょう。
炎症や毛嚢炎に対してはクリニックに常備されている抗菌薬やステロイドを処方します。
これに関しては、クリニックにより薬が大体決まっているので、その通りにします。
実際にこういった合併症が起こる可能性は数百分〜数千分の1程度なので、ほぼ見ないのが現状です。
硬毛化
レーザー脱毛を何回か行っているうちに、毛が濃くなる現象を「硬毛化」と呼びます。硬毛化は、特に今までになかった太くて長い毛が生えてくることを指します。s
しかし、硬毛化の発生率はそれほど高くなく、0.1%以下と考えられていますが、全身脱毛を行った場合には、全身どこでも硬毛化が起こる可能性があります。
硬毛化してしまった場合には、YAGまたはDiodeで高フルエンス照射を行うことが推奨され、通常2回の照射で解決することが多いです。
患者さんに硬毛化してしまった場合について質問された場合には、「硬毛化してしまった場合でも、レーザーの設定を変えて対応します。」というようなことを説明しましょう。
まとめ
様々情報を書いていったため、とても難しそうに感じる脱毛問診ですが、基本的には誰でもできるように全てマニュアル化されています。
よくある質問とその答え、なども常備されていることが多く、未経験者でも安心して行うことができます。
時給7000円〜1万円ほど、問診している時間以外は自分の作業をできる仕事なので、医師ができるバイトの中ではかなり楽な部類になります。
その分、競争も激しいため、案件が出たら早めの確保がおすすめです。
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